法学館憲法研究所に論説を寄稿

連載 文化・芸術と憲法 第5回「助成金交付と『表現の自由』―『宮本から君へ』最高裁判決」

志田陽子論説 法学館憲法研究所

「宮本から君へ」助成金訴訟最高裁判決
薬物事件で有罪が確定した俳優が作品中に出演していたことを理由に、映画「宮本から君へ」への公的助成金を「不交付」とした日本芸術文化振興会(以下「芸文振」)の決定の適法性が争われていた訴訟で、2023年11月17日、最高裁(第2小法廷)は、「薬物乱用の防止という公益が害される具体的な危険があるとは言いがたい」として芸文振決定を違法と判断した。不交付を妥当とした二審・東京高裁判決を破棄しての判決であり、これによって原告の映画製作会社「スターサンズ」の逆転勝訴が確定した。この判決は、文化芸術作品への公的助成金を巡って最高裁が判断を示した初めてのケースである。

憲法の観点からも、芸術助成の趣旨という観点からも、高く評価できる判決であると同時に、理論的には大きな影響を持ちうる内容が含まれている。…

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