「表現の自由と人格権の諸相――その現代的課題に向けて」『憲法研究』第10号に論文掲載

2022 0505 『憲法研究』10号

憲法学者・辻村みよ子氏の責任編集による学術専門誌『憲法研究』の第10号(2022年5月号)に、上記タイトルの論文を寄稿しました。

本文冒頭より一部抜粋

「表現の自由」は、「国家からの自由」を基本とする近代的・消極的自由権として出発した。しかし現在では、「公は市民や個人の表現は関与してはならない」というだけでは足りず、国や自治体が「表現の自由」を支える役割を担っているという現実に即した理論構成が必要となっている。

公が市民の表現活動を支援したり、情報インフラの整備監督に乗り出したり、自国や地域の文化的魅力を広報したりするようになっている現在、公は市民の言論空間にタッチしなければしないほどよい、と言える時代は過ぎたように見える。しかし日本では近代的な「表現の自由」がまだ達成には遠く、公に頼ることは「送り狼」を呼び入れることになるという危惧感がぬぐえない状況にあるため、議論にもねじれが生じやすい。しかしそれでも、公に「関わるな」と命じる理論だけではなく、公の暴走や過干渉を防ぎつつ、公が市民生活や文化的生活を支えるために必要な仕事をする、その理路を見出す作業が必要となっている。このことは、ヘイトスピーチ解消法(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)において自治体に解消努力義務が課されたこと、各種の文化芸術支援が文化芸術基本法によって根拠づけられていることなどから、否定できない流れになっている。こうした流れの中で、「人格権」も一定の役割を担うようになってきた。…

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