安保法制違憲訴訟 宮崎訴訟控訴審に意見書提出
福岡高裁宮崎支部に、追加意見書「安保法制違憲訴訟における人格権理論の確認と、宮崎訴訟原告(控訴人)の訴えについて」を「甲B184号証」として提出しました。
(本文「はじめに」より抜粋)
本件を含む同種の訴訟(安保法制違憲訴訟)では、提訴を受けている国(本件における被控訴人・一審被告)は、これらの訴訟を司法審査の限界を超える訴訟――抽象的違憲審査を求める訴訟ないし高度の政治的問題に属するため裁判所で扱うべきでない訴訟――であるとの理解に基づいて、主張されている実体的内容について実質的な答弁を行っていない。しかし本件で原告(控訴人)らは、権利侵害を受けていることを主張している。筆者は、この主張内容を検討した結果、原告(控訴人)らの主張の中には、法的な救済を求めるべき内容が多数含まれているとの所見を得た。本件宮崎訴訟についても同じである。
このうち人格権にかかわる裁判所の判断を見てみると、例えば札幌で提訴された安保法制違憲訴訟について、令和3年5月26日の札幌高裁判決は、令和元年4月22日に出された札幌地裁判決をそのまま支持しつつ、「人格権」という権利概念そのものを「憲法上保障された具体的権利であると認めることはできない」として退けている。しかしこの理解は、ほかならぬ裁判所が昭和39年の「宴のあと」判決以来50年余の年月をかけて積み重ねてきた先例の蓄積について知識を欠いているか、または法的推論以前に先に結論を決めてしまっていたためにことさらに無視したかのどちらかとしか考えられない。仮に前者であるならば、日本の裁判所がこれまで「人格権」ないし「人格的利益」と呼ばれるカテゴリーを容認し、差止めまでを認める法形成を行ってきたことをあらためて確認し、その根底にある保護法益と原理を確認した上で、この控訴審で本件控訴人らの訴えが法および判例法理に照らして検討されるよう求めなくてはならない。…