憲法理論研究会ミニシンポジウムで報告
学術学会「憲法理論研究会」のミニシンポジウム「『⼤⼈』と『⼦ども』の境界と⼈権」 に、報告者として登壇しました。4名の報告者がそれぞれの専門分野から、「18歳成人」が人権保障にもたらす影響について、検討しました。この中で志田は、2022年6月に成立した「AV新法」をめぐって、憲法の観点から検討しました。
(以下詳細)
シンポジウム概要(学会会報「憲理研通信182号」掲載)
憲法理論研究会ミニシンポジウム 2022年07⽉16⽇(⼟) 13:00〜17:00
(全体テーマ)「『⼤⼈』と『⼦ども』の境界と⼈権」 司会:安原陽平会員(獨協⼤学)
- 「『18歳成⼈』と⼦どもの⼈権」堀⼝悟郎会員(岡⼭⼤学)
本報告は、成年年齢の引下げによる「18歳成⼈」の実現を素材として、⼦どもの⼈権、ひいては⼈権⼀般について再考するものであった。具体的には、⼦どもの⼈権に関する鍵概念である「⾃律」および「保護」について検討したうえで、⾃律と保護の両⽴という難問に対峙し、「⾃⼰決定から⾃⼰責任を切り離す」という試論的⾒解と、その⾒解が抱える理論的課題を⽰した。 - 「18・19歳(特定少年)の実名報道について」渕野貴⽣⽒(ゲストスピーカー・⽴命館⼤学)
18歳・19歳(特定少年)のとき犯した罪により公判請求された少年について実名報道の対象とするとした改正少年法を受けて、表現の⾃由と報道される者の⼈格権というオーソドックスな対⽴軸を設定し、改めて特定少年の実名報道の可否について検討した。18歳・19歳は未だ成⻑の途上にある者として、成⻑発達権という固有の⼈格権が保障されるべきであり、他⽅で、将来公共的⼈物になりうることを想定した場合を含めて18歳・19歳の実名が公共性を有する場合は存在しないことを論じ、実名報道を解禁した改正に対して原理的な疑問を提起した。 - 「18・19歳のAV出演規制―憲法理論と政策課題のジレンマ」志⽥陽⼦会員(武蔵野美術⼤学)
2022年6⽉、いわゆる「AV新法」が成⽴、施⾏された。当初は18・19歳を社会経験不⾜に乗じた実質強要被害から保護する、という問題系から始まった議論だったが、成⽴した法規は、表現の⾃由、職業の⾃由、性的⾃⼰決定と⼈間の尊厳論など、憲法上の議論となりうる内容を多々含むこととなった。そこで、この法律をめぐってありうる憲法論について検討した。 - 「成年年齢引下げと消費者法―『おとな』と『こども』の間」⼤澤彩⽒(ゲストスピーカー・法政⼤学)
⺠法の成年年齢引下げにより、18歳および19歳の消費者トラブルの増加が懸念されている。しかし、18歳および19歳の若年者は、⺠法上「成⼈」、つまり、⾏為能⼒を有するため、本報告では、これらの者への⺠事ルールによる特別な保護の在り⽅を考える上で、「おとな」と「こども」の間の若年者を、「若年」であることを理由に保護するのか、それとも、「若年」であることを含めた「脆弱性」に着⽬するのか、検討した。
2022-07-16 by
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