図書新聞「 2020 年上半期 読書アンケート 」に寄稿

図書新聞3457号

① 津田大介 監修 、あいちトリエンナーレ実行委員会(編集) 『あいちトリエンナーレ 2019 情の時代 Taming Y/Our Passion 《 AICHI TRIENNALE 2019: Taming Y/Our Passion 》』(生活の友社 2020年4月)
② 毎日新聞取材班『公文書危機 闇に葬られた記録』(毎日新聞出版 2020年6月)
③ ダニエル・キーツ・シトロン (著), 明戸隆浩 , 唐澤貴洋 , 原田學植 大川紀男『サイバーハラスメント 現実へと溢れ出すヘイトクライム』 (明石書店 2020年6月)

昨年8月以来、さまざまな角度から論じられてきた「あいトリ」。名称変更の話題もあり、何が問題だったのかを改めて問い直さねばならない。①は、発売当初は入手困難となる売れ行きだったことも、社会の注目度を伺わせて印象深い。 こうした出来事については決定過程の検証が欠かせないはずだが、この芸術祭への補助金不交付から一部交付へ至る決定過程について議事録がないという話は、大きな問題だ。検証可能性が確保されることは、市民の側の「知る権利」にとって欠かせないものだが、今、その種の《検証の不自由》は、日本社会の公共の関心事となるべき事柄の全体を覆っている。このことを追及した新聞紙上の特集を単行本化した ② は読みごたえがある。また、芸術祭への攻撃的抗議は、こうした社会全体の流れの中に位置づけられる一現象だったのだろう、と思わせられるのが③である。どのような被害が進行してきたのか、今後の議論の参考にしたい。

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