マガジン9「近年の日本の政治と憲法の現状について」の論説掲載

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1月10日、マガジン9に「近年の日本の政治と憲法について」の論説が掲載されました。

昨年、「総裁としての今任期中に改憲を目指す」と宣言した岸田首相。2022年末には敵基地攻撃能力(反撃能力)保有を認める「安保関連三文書」が閣議決定、憲法審査会では緊急事態条項についての議論が続けられるなど、なし崩しに改憲への道が開かれようとしているようにも感じます。近年の日本の政治と憲法の現状について、憲法研究者の志田陽子さんにお話を伺いました。

以下、サイトから一部引用。

高等教育無償化も同性婚も、憲法改正なしで実現できる
──昨年11月、岸田首相は自民党総裁としての今任期が終了する2024年9月までに「改憲を目指す」と発言しました。かつて、安倍元首相も同様に「任期中に改憲を」と述べていたことが思い起こされますが、首相や与党が前のめりに「改憲」を叫ぶ近年の状況をどう見ておられますか。

志田 今から10年ほど前、野党だった自民党が「日本国憲法改正草案」を出したあたりから、「憲法改正を実現することが保守の政治家としてのお手柄だ」という雰囲気が非常に強くなってきました。そして、その「お手柄」を立てたい人たちが、実際には憲法を変える必要のないテーマであっても、「このために憲法改正が必要だ」といってさまざまなアイデアを出してくることが続いてきたと感じています。

──「アイデア」とは、たとえばどういったものですか。

志田 私は教育者でもあるので、一番気になったのは、高等教育無償化のための憲法26条改正の議論ですね。本当に無償化したいのであれば、憲法改正をしなくても問題なくやれるはずで、むしろ議論すべきは財政的に本当にやれるのか、リップサービスとして言うだけで「できない理由」として憲法を利用していないかということです。
たしかに憲法26条2項には「義務教育は、これを無償とする」とありますが、これはあくまで国がやらなくてはならない最低ラインを示したもの。財政の状態や国民の希望にあわせて、それより上の段階まで支援しますということであれば、憲法には抵触しないんですよ。本当に無償化が必要だと思っているというよりは、「何か改憲をやってみたい」政治家が、そのためにこのテーマを持ち出してきたということだと思います。
また、LGBTQの権利、特に結婚制度をめぐる議論についてもそうです。同性婚に門戸を開くには憲法24条を改正しなくてはならない、だから今のままでは法整備はできないとしばしば言われますが、これも本来は憲法改正の必要のない問題です。…

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