志田陽子「今月の1冊――斉加尚代・毎日新聞映像取材班『教育と愛国――誰が教室を窒息させるのか』+映画『教育と愛国』(2022年公開)

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αシノドス 「今月の一冊」【編集長による目次紹介文より】

これまで芹沢一也が書いてきた「今月の1冊」ですが、志田陽子さんと橋本努さんとリレーでお届けすることになりました。今号の担当は志田陽子さん、『教育と愛国』を映画とともに取り上げていただきました。記事中であげられている「お雑煮」の例が卓抜です。ご存じのように、お雑煮は各地方によってバラエティに富んでいます。では、そうした多様性をめぐる議論、あるいは対立を前に、政治や教育が行うべきことは何でしょうか? お雑煮の正当な形について政府見解をつくり、それを教え込むことでしょうか。また、なかには気に喰わないお雑煮もあるけれど、そこは事情を理解し許容するようにと、寛容の精神を教えることでしょうか? あるいは、各地方によってお雑煮の形は異なっているのだと、ひとつの事実として教えることでしょうか? ぜひみなさんもこの問いを念頭に本文を読んでみてください。

 

本文一部抜粋

2020年、日曜夜の大河ドラマ「麒麟がくる」では、明智光秀や織田信長に関する新解釈に基づいたドラマ作りが話題になりました。コロナ禍で茶飲み談義もままならない中、SNS上ではドラマに表れた解釈や俳優の演技をめぐって談義が交わされ、大いに楽しんでいる人もいれば、「私の持っているイメージと違う!私はあの描き方は認めない!」と憤慨する人も。歴史に新たな発見や新たな解釈が付け加わり、そこに社会一般の人々が関心を寄せて談話しあうのは、文化を耕し豊かにする営みです。多くの人がそんな批評談義を(憤慨も含めて)楽しみこそすれ、テレビ局に脅迫や、長時間の説教ハラスメントを繰り返す人が出てくれば、そうした脅迫や嫌がらせをする側に問題があることは、誰でも合意できることでしょう。…

(中略)

…教育や文化の私物化を防ぎ、その公共性を保つことが、法の本来の趣旨だった(はずです)。 その出発点から、今、教育の現実がどれだけ乖離しているかをまざまざと見せてくれるのが、2019年の夏に出版された『教育と愛国』でした。…

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