朝日新聞社「ジャーナリズム」11月号(11月10日発行)に論説掲載

朝日ジャーナリズム2019年11月号 掲載誌画像

「文化芸術における自由と公共性――芸術の萎縮と私物化に「NO」というために」

すでに採択した事業に対し、事業活動の足場となる補助金を交付しないという措置をとることは、制度への信頼を大きく損なうことになる。補助金についてこうした運用が慣例化し、芸術の萎縮を招くことが懸念されている。

芸術祭閉幕にあたって、こうした懸念を現実のものとしないために、作家たちによる「あいち宣言」が提案された。この文書は、「芸術の自由」、芸術家の権利と責務、鑑賞者の権利と責務など、憲法と文化芸術基本法のエッセンスを総合的に汲み取りながら具体的提案を盛り込んだ内容となっており、今後の文化芸術政策において参照されるべき価値のある文書となっている。

今回の事件をきっかけに、文化芸術助成というものが社会一般の関心を呼んだことの意義は大きい。これを機に、文化芸術支援について、法の観点から考えてみたい。

1 文化芸術の私事性と公共性
(1)「国家からの自由」から「支援」へ
まず、この問題が置かれた地図を確認しておきたい。
法や行政などの「公」が市民の自由を尊重すること、そのために「公」は市民の「自由」の領域に介入しないことが、憲法でいう「近代」の基本原則である。しかし「公」がこうした自由放任の姿勢だけをとっていると、市民の社会生活を支えるために必要な公共財が成り立たない。 ・・・

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