『教育』10月号に論説掲載

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専門誌『教育』の10月号(14-21頁)に、論説が掲載されました。

「文化芸術と教育と公共市民文化」

本文一部抜粋

価値観の多様化を認めあう社会においては、誰かが誰かを不快にさせることを避けることはできない。・・・

文化芸術を政治的関心から切り離すことは、高度な、おそらくは不自然な《摘み取り作業》を人の精神に要求していることになる。

こうした要素が充満した現代国家の中で、文化芸術や市民イベントを、「誰かを不快にさせたらいけないもの」、「政治的テーマに触れてはいけないもの」と考えなくてはならないとしたら、これは民主的な市民文化の形成にとって、深刻な桎梏となってしまう。今、多くの教育関係者は、こうした不自然な《摘み取り作業》と《主権者教育》とを同時進行で行うというダブルバインドの中で、日々の業務を行っていると思うが、この状況と、文化芸術関係者を取り巻き始めた精神的環境とは、通じるものがある。この状況を脱却するための理論を模索することが、教育・文化芸術・学術研究の諸分野にまたがる課題となってきた。

民主主義とは 民の意思をもちよって熟議・集約した結果のものであるべきで、最初から特定の結論へと囲い込んでしまっては、民主主義の名には値しない。芸術・学術・教育の分野は、知性・感性の両面から、そうした民主主義の基礎体力を形成していくもので、そこにこそ公共的な意義がある。憲法論と教育論にまたがって、この基礎体力を回復ないし構築する作業が、今、必要である。

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