「練馬区立美術館を考える会」パネルディスカッションに登壇
「練馬区立美術館を考える会」主催のシンポジウム「区民の美術館――公共施設と区政のあり方を考える」に登壇し、「文化芸術と民主生活――その連環を止めないために」と題する講演を行いました。
志田の講演は、この分野について考えるときの足場となる理路を解説する内容でした。
当日配布レジュメより、一部抜粋
文化芸術・教育における「公共」と「自由」
文化芸術支援事業において「政治的訴え」が補助の対象外とされるのは、公金や公の施設が特定党派によって私物化されるのを防ぐためである。一方、政治課題になりうる事象に触発されて作品が生まれてくることは通常のことであり、それが市民文化への啓発にもなるので別問題。
この領域での行政の中立性も、この角度から理解すべきである。
行政が中立を保つ本来の理由は、一般市民の「自由」を一定の政治的見解や価値観へと囲い込まないことにある。「政治的中立」とは、この線引きを政治と行政の側が守ることを意味する。
一方、美術館や芸術祭では何らかの選別が行われるが、ここに支援者(自治体の長など)の個人的な好き嫌いが入り込むと、「芸術内容の私物化」が起きる。これを防いで、多様な表現、多様な視点を提供することが文化芸術支援の眼目であり、芸術専門家による審査制度も、そのためのものである。
文化芸術基本法の最後のほうには、経済との連携も肯定的に扱われている。しかし、それでも規範としての優先度が高いのは総則としての意味をもつ第1条の「自主性」である。この自主性を損なうような選考方法を採用したとき、参加活動者の意欲を支えきれなくなる。…
2022-05-22 by
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