「憲法とも民主主義とも相容れないシンボルの政治」 週刊金曜日に論説掲載

2022-0902 週刊金曜日02

「憲法とも民主主義とも相容れないシンボルの政治」

(本文後半より抜粋)

…何より、このような議論にさらされることは故人と遺族にとっても不幸ではないか。

むしろ、安倍元首相「国葬儀」の理由の一つとなった、「蛮行による死去」ということで言えば、無念・無残な死を遂げた市井の人々は、戦没者以外にも大勢いる。そうした無名の人々こそ、国が喪主となって国の費用で、哀悼の儀式を行えば良いのではないか、と一瞬思いたくなるのだが、しかしこれには反論があるだろう。哀悼される当人や遺族がそれを望まない場合もあるので、国が勝手にやるな、との批判である。

結局、具体的故人の追悼ではなく、国が歴史的責任を引き受けると決意したときにその決意を示すシンボルとして記念行事をやるのであれば可である、とするのが筋である。そう考えていくと、やはり今回の「国葬儀」は、民主主義・平等の観点からも、個人の尊重・多様性の尊重の観点からも、今日の社会では通用しない《まつりごと》のありかただ、ということになる。

それよりも先にやるべきことをやろう、哀悼は示したい人々が心で示し、喪主の資格は遺族に返し、国のお金はもっと必要なところに先に使おう、という議論をぜひ国会でやってほしい。

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