「女たちの21世紀」No.100に論説掲載

「自由と支援の間の不自由――あいちトリエンナーレ2019展示中止問題 」 2019年12月16日

女たちの21世紀100号 論説掲載紙面

8月1日に開会した芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」が10月14日に閉会した。

開催直後の8月3日、この芸術祭の中の企画展「表現の不自由展・その後」(以下、「不自由展」)の展示が中止となった。理由は運営の安全性にあると説明された。その一方で、複数の公人(自治体首長や議員など)から、展示作品への非難や展示中止要請、「補助金」に言及しながらの「事実関係を確認、精査」といった発言が相次いだ。10月8日、展示は再開され、懸念された暴力的妨害や混乱なく、閉会を迎えた。
しかし文化庁は、申請手続きの不備を理由に、この芸術祭の全体に対して交付する予定だった補助金約7800万円を交付しないことを決定している。文化庁のこの姿勢には、多くの関係者・識者から、決定の撤回を求める声が上がっている。

本稿では、この出来事と、この出来事が社会に今も与えている余波を見ることで、私たちの日常が《ものが言えない社会》に陥っていく危険について考える。

1 これは「検閲」か

この展示中止については、「検閲に当たる」との声が多方面から上がっている。表現者や市民の実感を表す言葉として、この言葉が出てきたことの社会的意義は大きい。一方で、この言葉が明文で定められている憲法から見ると、どうなるのだろうか。・・・

 

「女たちの21世紀」No.100 【特集】暴力扇動の ダイナミズム ―「 表現の不自由展・その後」 中止事件から考える

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