武蔵野美術大学 研究紀要第50号に論文掲載(2020年3月1日発行)

ムサビ紀要50号 20200319

武蔵野美術大学研究紀要 第50号(2020年3月1日発行)に論文「学術研究倫理と名誉毀損」が掲載されました。

本稿では、研究不正(学術研究倫理違反)の認定手続と名誉毀損との関係を考察する。学術研究の成果公表は、憲法21条「表現の自由」、23条「学問の自由」の保障を受ける。研究不正があったことの公表は、通常は、学術研究の公正性維持という目的から、正当と認められるべきである。しかしこれが虚偽であった場合や根拠なく行われた場合には、名誉毀損に該当する。本稿では、このルールをいくつかの裁判例から確認し、次に近年の裁判例のうちいくつかが従来の先例から逸脱していることを取り上げ、その逸脱が上記のルールより高次にある「表現の自由」法理に基づく(資する)ものなのかどうかを検討した。本稿の結論は、近年の逸脱的な判決をそのように評価することはできず、「研究不正」の認定にあたっては、裁判においても研究機関内においても、従来の判例理論に基づく綿密な精査が求められる、というものである。

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